AL短編/隠すルーク AL短編 2012年08月19日 アシュルク短編02 ルークが何かを隠しました ※ご注意※ BL/性的(直接的な言葉等あります)…等の表現あり。 ED後捏造で、アッシュとルーク2人で帰還。 バチカルのファブレ邸に落ち着いています。 外見年齢…アッシュ=21才。ルーク=17才。 アッシュさんの頭のネジは全て行方不明。 「ルークが膝の上に乗ってきました。」の後日設定です。 仕上がり未チェックなのはデフォルトでお願いします。 確かに書いた管理人はバカですが、それが何か?(←開き直った! ルークだけでなく、アッシュも乙女思考になりました…(合掌!!) AL短編その2 お前、そりゃ反則だろう。この屑が。 ここ2週間ほど、アッシュはその言葉を頭の中で何度も繰り返していた。 事の起こりは2週間前。 アッシュは、公爵である父クリムゾンのベルケンド視察に同行する事になり、その出発を翌日に控えていた。視察の旅程は2週間程度で、音素に代わる新エネルギーを研究している第一音機関研究所も訪れる事になっている。 アッシュにとって『第一音機関研究所』と『ベルケンド視察』は、心をざわつかせる言葉以外の何物でもなかった。10才以前に受けた超振動実験を、嫌でも思い出してしまうからである。 成人した今となっては、心がざわつく程度のもので、実験の記憶も殆ど薄れつつあり、昔のような恐怖や苛立ちを感じる事はなかった。…と思っていたのは、アッシュ本人だけだったらしい。 その夜、部屋を訪ねてきたルークに、 『…アッシュ、明日からのベルケンド視察、本当に大丈夫か?…本当は、辛いんじゃねぇの?』 と聞かれた上、 『だって、視察が決まってからずっと、アッシュの眉間の皺、増えたまんまだし…』 と指摘されてしまい、 『父上も母上も、あとナタリアも、すげぇ心配してるぜ』 と言われてしまって、 アッシュもようやく自分自身が抑えていた恐怖や苛立ちに気付かされてしまったのである。 ローレライを解放した後、大爆発という現象によってアッシュとルークは一つになり、記憶を共有した。ローレライの計らいによって、再び2人に分かたれたのだが、アッシュはルークの記憶を得て、ルークもまた少しだけらしいがアッシュの記憶を得たらしい。 その少しだけ得た記憶のおかげか、アッシュにとって『ベルケンド視察』がどれほど心の負担になるのか、ルークには分かったのだろう。 隠した所で無駄だな。そう考えてアッシュはさっさと諦めた。 『……心配させるつもりはなかったが、俺自身でも気付かねぇ内に、緊張してたんだろうな』 そんな風に認めて、一つだけ息を吐き出した。 息を吐き出すと、途端に、身体が軽くなったような気がした。 ルークが傍に寄って来たので、アッシュは本を閉じ、ソファに投げ出す。ルークはいつものように膝の上に乗ってきて、アッシュをぎゅうぎゅうと力を込めて抱き締めた。 『何だ?慰めてくれんのか?』 『俺も、アッシュと一緒にベルケンドに行く』 『馬鹿言うな。確か、明後日には、お前はバチカル廃工場跡地の再開発計画の会議が…』 とアッシュが言いかけた所で、ルークによって口を塞がれる。 ルークの方からキスをしてくる事など今までなかっただけに、アッシュが驚いていると、子供同士がするような唇を押し付けるだけのキスをして、ルークは唇を放し、アッシュの瞳を覗き込んだ。 『アッシュ、ベルケンドに行くの、怖いだろ?』 『…そうだな、子供の時に感じた恐怖とは違うものだろうが、……多分、怖いんだろうな』 素直に口に出すと、息を吐き出した時のように、身体が軽くなる。 ルークが、緊張を解いてくれる。心を軽くしてくれる。 そんな考えが浮かんだ途端、 込み上げてきた愛しさを抑えきれなくなり、アッシュはルークを抱き締めた。 『心配をかけた。だが、もう大丈夫だ』 『……そ、っか…』 ルークもまた背中に回した腕に力を込め、アッシュの肩に顔を埋める。 『……なぁ、アッシュ』 『何だ?』 『今日は、最後まで、して?』 その言葉に、アッシュは驚いて目を見開く。 『……お前、最後まで、って…』 『だ、だから、アレだよっ、アレ!あー…くそっ、恥ずかしいんだから、言わせんじゃねぇーよっ!』 ルークはアッシュの背中をバシバシと叩いた。痛くはないと言いたい所だが、ルークも剣士なので腕力があるのか、地味に痛い。 『最後まで…って、意味分かって言ってんのか?』 『分かってるっつーの。…つーか、男同士はそうするって教えてくれたの、お前じゃん。普段、俺たちがしてる事って、本当は、その、…アレ、…せ、セックス、って、言わねぇんだろ…?』 ルークの言う通り、今まで、男が1人でする事を単に2人でやっているだけで、最後までしてはいなかったのだ。アッシュはルークが気持ち良くなればそれで良いと思えたし、17才で成長を止めてしまったルークの身体に負担をかけてしまうのを恐れたからだった。 アッシュは、レプリカ保護施設でレプリカが消滅したという報告を受ける度に、ルークを思って、心臓を抉られるような気持ちになった。世界中から第七音素が減少していく中、音符帯に引き寄せられて乖離するレプリカも増えつつある。ささいな病気、ちょっとした怪我で乖離するレプリカも珍しくはないと聞いていた。 『痛ぇのは嫌だって、前に言ってなかったか?』 アッシュが冗談めかして聞くと、ルークはアッシュの肩に顔を埋めたまま、 『ちっと怖ぇけど、…でも、俺がしてほしいって思ったんだ。明日から2週間も会えねぇし…』 そう言った後、 『……アッシュが、我慢してんの、俺、気付いてた。…俺、アッシュを満足させてぇんだ…』 小さく呟くような声で続ける。 アッシュはルークを抱き締める腕に力を込めた。 今、腕の中にある小さな身体を、思うままに貪る事が出来るなら、どれほど満たされるだろうか。 そんな衝動が一瞬だけ湧き上がったが、 アッシュは苦笑すると、ルークの頭を軽くぽんぽんと叩いた。 『我慢なんざしてねぇよ。つーか、これ以上言うと、本当に、』 そこで、ルークが顔を上げる。 『……俺じゃ、だめ?俺だと、アッシュを満足させられねぇ…?』 ゆらゆらと不安に揺れるルークの瞳を見つめてしまうと、アッシュにはもう抑えようがなかった。 『後で泣いて謝っても止めてやれねぇから、覚悟しろよ。煽ったてめぇが悪いんだからな』 アッシュが獲物を捕捉した獣のように目を細めると、 『…っ、おう!来るなら来いっ!』 ルークは緊張で頬を引き攣らせながらも歯を見せて笑う。 もっと色気のある返事は出来ねぇのか。とアッシュは思ったが、ルークの唇に噛み付くようなキスをすると、問答無用とばかりにソファに押し倒した。 そのような経緯で、2週間前、遂にルークと身体を繋げるに至ったのだが。 「…お前、そりゃ反則だろう。この屑が」 2週間前の夜を思い出して、アッシュは思わず呟いてしまっていた。 アッシュの予想では、行為に及んだ途端にルークは『痛ぇ』だの『きつい』だのと喚いて、止めたがるだろうと思っていた。頭の中身が8歳児だと思って高を括っていた…というのもあったのだが、その予想はあっさりと裏切られてしまった。 ルークが痛がらないようにと慎重に進めたのは確かだが、それでも、初めて男を受け入れるルークがあれほど感じて乱れるとは予想もしていなかったのである。 普段は純真無垢な子供のような笑顔を周囲に振りまき、英雄然とした態度を取る事もあるルークが、演技の上手い商売女も裸足で逃げ出しそうな程に乱れたのである。 そのギャップたるや、まさに『反則』だった。 ルークが何度も『アッシュ』と名を呼び、縋るように必死に腕を絡めてくる度、アッシュは煽られ、何度もルークの中で果ててしまったのだ。 後始末をして身体を清め、着衣もさせて、眠るルークをルークの部屋のベッドまで運び、そこで夜が明けるまでルークを抱き締めてアッシュは眠った。 『ベルケンド視察』に出発する朝が来た事が分かっても、アッシュの心は凪いでいた。 恐怖も苛立ちも、まるで嘘だったかのように、心のどこにも存在していなかった。 眠るルークを起こすのは忍びなく、額に軽いキスを落として、ルークの部屋から去り、さっさと朝の支度を済ませると、父と共に屋敷を出てベルケンドへ向かった。 ベルケンド視察の最中、以前感じていた恐怖や苛立ちは確かに消えていたのだが、その代わりのように、ルークとの夜を思い出して、妙な気分に何度も陥ってしまった。その度に、冷静さを取り戻す為、譜術の詠唱のごとく『…お前、そりゃ反則だろう。この屑が』と心の中で呟いていたのである。 現在、アッシュは船の甲板にいて、遠くに見えてきたバチカルの景色を眺めていた。 ベルケンド視察は滞りなく進み、全ての日程を終わらせる事が出来たのだ。 全てルークのおかげだと思った。 不意に、ルークが『アッシュ』と呼ぶ声、泣きすぎて枯れかけた声を思い出してしまい、アッシュはまた「…お前、そりゃ反則だろう。この屑が」と呟く。ルークに会ったらどうしてやろうかと考えるだけで、下からざわざわと何かがせり上がってきた。 しかし、 「アッシュ、どうした?」 背後から声をかけられ、アッシュは背筋を伸ばすと、手摺から手を離して振り返る。 真紅の髪を靡かせて振り返った先には、同じように真紅の髪を風に揺らす父親の姿があった。 「どうした、何か考え事か?もうすぐ、船がバチカルに着く。そろそろ船室に戻りなさい」 「はい」 「バチカルに戻ったら、私はその足で登城するが、お前は先に屋敷へ戻りなさい。陛下への挨拶は今夜の夕食会の時で良い。ますは屋敷に戻り、シュザンヌとルークに顔を見せてやりなさい」 息子の異変を感じての気遣いだろう。父クリムゾンはそう言うと、背を向けて船室に戻って行く。 そんな父親の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、 2人の息子が一線を越えた事をあの厳格な父親が知ったら、どうなるのだろうか。と考えた。 アッシュは屋敷に戻り、まずは母シュザンヌの私室を訪ね、挨拶をした。心配性の母は身体に障るのではないかというくらい過剰に喜び、しかしすぐに「さぁ、早くルークにも顔を見せに行ってあげて」とアッシュを促した。 廊下を進んでいると、窓から、ルークの部屋が見えた。ちょうど向こう側のドアから中庭へルークが出てきた所らしく、アッシュの姿には気付いていないのかルークは中庭を通り抜けて、自分の部屋へ入っていってしまう。 アッシュも追いかけるようにして、ルークの部屋の前へ行くと、コンコンと軽くノックしてから「入るぞ」と続け、返事を待たずにドアを開けた。 ルークは自分のベッドに腰掛けていたが、 「っあ…」 驚いて顔を上げた次の瞬間には、はっと何かを思い出して、手を背中に回す。 『ルークが何かを隠しました。』 「……おい、今、何を隠した…?」 咄嗟にルークは隠したが、アッシュにはしっかりと見えていた。 確かに見えはしたが、それが何なのか、アッシュには理解できなかったのだ。 「…べ、別に、何も……」 ルークは言いかけて、ベッド脇のワゴンに乗っている水差しとコップ、そして、白い紙袋に気付き、さっと顔を青褪めさせる。アッシュもルークの様子を見て、ワゴン上に視線を動かした。病院名のロゴが印刷されているらしい薬袋を確認し、アッシュはルークの前まで歩を進める。 「それは、何の薬だ?」 「…え、ぁ…、か、…風邪、薬……」 「俺がてめぇの下手な嘘に騙されるとでも思ってんのか!」 アッシュはルークの襟元を掴み上げる。ルークは驚きと怯えの混じった視線をうろうろと動かした後、アッシュから逸らして伏せた。 「…正直に言え、何の薬だ?」 「……か、乖離、を、止める、薬…」 「お前……っ!」 アッシュはそのままルークを引き寄せると、力任せに抱き締める。 『乖離』 正直に言えとは言ったが、一番聞きたくない言葉だった。 氷の手で心臓を掴まれたような底の知れない冷たさが、身体中の血液を一気に凍らせていく。 今まで感じた事のない恐怖だとアッシュは思った。 「…ご、ごめん、アッシュ、…お、俺、レプリカ…で、あ、あの、レプリカ、だから…っ」 「もう言うな…言わないでくれ……っ」 どんなに抱き締める腕に力を込めても、ルークを地上に引き留める事は出来ない。 ルークを失ってしまう。 そして、それと同じくらいに恐ろしいと感じたのは、自分の中に確かに存在する一つの思いだった。 ルークを失ったら、生きていけない。 後日談。 「で、アッシュは勘違いして、俺が乖離しかけてると思っちまったみたいでさ」 「あんな風に隠すてめぇが悪い」 「ははは、まあ、勘違いで良かったじゃないか」 テーブルを囲んで、ガイとの会話を久々に楽しむルークとアッシュ。 「そもそも、最初から隠さず、乖離を予防する新薬だと言えば良かったんだろうが」 「だから、俺、風邪薬じゃねぇってバレた後、すぐに言ったって」 「いいや、言ってねぇ」 「言った!」 「言ってねぇ!」 「おいおい、お前たち、いつからそんなに仲良くなったんだ?」 「「仲良くなんかねぇ!!」」 ガイは仲良く声を合わせる2人を前に、穏やかに微笑みながら紅茶に口をつける。 「アッシュは『そもそも』なんて言うけどさ!」 「何だ?」 「そもそも、1回ケツに突っ込まれたくらいで俺が乖離する訳ねぇっつーの!」 ぶふーっ!!と盛大に紅茶を噴き出すガイ。 しまった。と言うような顔で口元を押さえるルーク。 アッシュだけは冷静に、 「てめぇ、何言ってやがる。最初の夜から、1回だけで終わらせてねぇだろう。この屑が」 とルークの言葉を訂正した。 ※※ END ※※ ※ PR