AL短編/アッシュルーム AL短編 2012年10月20日 アシュルク短編03 元『サイッテーな話です。どのくらいサイテーなのか分かったアナタも何気に…ゲフン、ゲフン、ベツニナニモイッテマセンヨ。最近ちょっとシリアス話が多くなっていたので明るい話を書きたかっただけなのですが、今更感が満載のよくあるネタで、ギャグやコメディと銘打てるほどギャグでもコメディでもありません。二重の意味で『ヤ』マも『オ』チも『イ』ミもありませんので、とにかく全部すいません(←※タイトル)』を改めまして、 『マッシュルームアッシュルーム』 ※ご注意※ ただひたすらに、下ネタ。 サブイベント「キノコロード」クリアからのED後捏造。 キノコロードの入り口で待っていたルークは、 いつもと同じ不機嫌な顔のアッシュと仲間達が戻ってきた姿を見つけ、笑顔を輝かせた。 笑顔の理由はもちろん「良かったー!これ以上キノコに囲まれてたら、気持ち悪くて吐く所だったぜ!」なのだが、一緒に待っていた操縦士のノエルやギンジにも、真実は分からない。 そんな笑顔のルークの前へ、迷いなく真っ直ぐ歩いてきたアッシュは、押し付けるようにキノコの入った袋をルークに渡した。 「………母上を頼む」 アッシュは、バチカルの屋敷には二度と戻らないつもりだった。病気の母親を想って、薬の材料になるルグニカ紅テングタケを採りに来たが、自分でバチカルへ持って帰るつもりは最初からなかったのだ。 「お、おい!アッシュ!」 ルークの制止も聞かず、一匹狼のアッシュ、ニヒルにかっこよく退場。 …と誰もが思ったが、 「おい、ミュウ、お前はキノコに詳しいんだろ?お前もちゃんと確認してくれよ。ほんとに、ルグニカ…何とかかどうかさ。間違えたりしてねぇよな?」 暢気なルークの声が聞こえ、アッシュは足を止めた。 「まぁ、ルーク!わたくし達、ちゃんと図鑑を確認しましてよ!」 と怒るナタリアの声が続く。 「だ、だって!キノコなんて、似たようなのばっかりで、見分けなんて全然つかねぇじゃん!!」 「確かに、キノコの見分けは難しいですのー…」 ミュウの頼りない声。 おいおい、間違えたなんてシャレになんねぇぞ。ルグニカ紅大テングタケには毒があるんだ。 …なんて事を思いつつ、アッシュは仲間の輪にさくっと戻ると、 ルークの頭の上に乗った青くて丸くてふわふわの可愛い聖獣を睨み付ける。 「おい、獣。念の為、確認してみろ。そのキノコで間違いないな?」 「間違いない…と思う、ですの…」 「…ちっ、頼りにならねぇ獣だな」 なんだか自分が睨まれているような気がするルークは、袋から取り出したキノコを、ミュウにもよく見えるように高く翳した。 「ほら、よく見ろって。アッシュのキノコかどうか、教えてくれよ。間違いないんだろ?」 『アッシュのキノコ』ではなく、正式名称は『ルグニカ紅テングタケ』だ。 が、名前が長いせいで、ルークは覚えられなかったようだ。 「アッシュも、もう一回よく確認してくれよ!自分のキノコかどうかさ!!」 ルークがそう言った瞬間、後方からガイの「ぐはっ!」という断末魔の声が聞こえてくる。 が、ルークもアッシュも聞こえなかった事にした。今の問題は、キノコである。 ルークから差し出されたキノコを手に取り、図鑑で見たものと同じものだとアッシュは考える。 が、素人でしかない自分の判断では、やはり心許ない。 「まぁ、毒があるかどうかは、最悪、食べてみれば分かるが…」 「食べる!?ふざけんじゃねー!俺は御免だからな!!」 「食うなんざ冗談に決まってるだろう。そもそも、誰もお前に食えとは言ってねぇだろうが…」 怒る気力も沸かず脱力しながら言えば、 「そういえば、ルークはキノコが嫌いでしたよねぇ?」 後方から、ジェイドの声が聞こえてきた。 絶妙なタイミングなのは、もちろん狙っての事だ。陰険ロン毛鬼畜眼鏡のジェイドなので。 「は?キノコが嫌い?こんな味もねぇような物がか?」 「変な味あるだろ!食感もぶにぶにしてて変だし!」 「てめぇ、確か、他にも嫌いなものあったよな…?」 アッシュが眉をひそめながら聞くと、静観していたアニスが、にやにや笑いながらルークをつつく。 「そうなんだよね~!ルークって、嫌いな食材がめちゃくちゃ多いから、料理での回復率がいっつも悪くってぇ~!もぉちょ~っと嫌いなものが少なくなってくれると、料理を作るアニスちゃんも、楽になるんだけどなぁ~!」 「お、おいっ!アニス…!!」 慌てて止めようとしたが、時すでに遅し。 「おい、屑…、それは一体どういう事だ…!!」 アッシュの眉間のシワが、すでに深くなっている。 こうなってしまっては、何を言っても無駄だ。とルークは、普段から学習している。こうなった以上、出来損ないだの屑だのと罵声を浴びせられて、機嫌が収まらなければ胸倉を掴まれて突き飛ばされて、仲間が止めてくれなければ、殴られるか蹴られるだろう。 「……どうもこうも仕方ねぇだろ。嫌いなものは嫌いなんだよ…」 弱気な声で控えめに反論すると、 「…そうか。おい、良かったな。今日の俺は、機嫌が良い」 珍しくアッシュが、ふっ、と笑った。 あれ?怒鳴られない?とルークが安心して笑顔になった瞬間、 「…っっっ!?」 いきなりキノコを口の中に突っ込まれた。 「お前の好き嫌いを治す手伝いをしてやる。有り難く思え」 慌ててキノコを引き抜き、アッシュを睨むルーク。 「…っっ、いきなり口に突っ込むとか、マジありえねぇ…!つーか、やっぱマズイ!アッシュのキノコって、すっげぇ苦いっっ!!」 後方で再びガイの「ぐあぁっ!」という断末魔が轟く。が、ルークもアッシュも、今はそれ所ではない。ティアの「ファーストエイド」という声が聞こえてきたので、回復は間に合った筈だと、頭の端で理解した。 アッシュとルークの間に、いつものようにナタリアが仲裁に入る。 「もう!アッシュ、乱暴な事は止めて下さいませ!あぁ、ほら、ルークも泣かないで下さいな。男の子なのでしょう?」 「俺は泣いてねぇー!」 「そんな風にお顔を真っ赤にして、涙目で言われても、困りますわ。でも、アッシュのキノコに毒がないようで本当に良かったですわね」 「あ。そういえば、そうだな…」 ナタリアとルークの2人は、しげしげとアッシュのキノコを眺める。 「でも、すっげぇ苦かったぜ?」 「生ですし、苦いかもしれませんわね」 「よく見ると、アッシュのキノコって、案外、可愛いのな」 「そうですわね。思ったより大きくも長くもありませんでしたわね」 「ルグニカ…何だっけ?とにかく、アッシュのキノコって、名前からして、もっとグロテスクなイメージだったんだよな。俺のイメージでは、黒くて太くて長くて変な匂いで…」 「まぁ、黒い訳ありませんわ。アッシュのキノコですもの。紅いに決まってるではありませんか」 「ははは、言われてみりゃそうだな」 ほのぼのと婚約者同士で話を弾ませる姿を見ていられず、アッシュは思わず視線を反らす。 自らの意思で、一度は捨てた居場所だ。 今更、ナタリアとルークの仲睦まじい姿を目にした所で、アッシュには関係ない筈だった。 少なくとも、アッシュは自分にそう言い聞かせた。 反らした視線の先で、ティアが「大変!ガイの鼻血が止まらないわ!!」と叫び、高度な治癒術をかけていたが、かつての婚約者の事を想うアッシュにとって、今はそれ所ではなかった。 「つーかさ、口の中で、変な汁が出た気がしたんだけど」 「まぁ、汁…ですの?」 「…うーん、先っちょの方から出た気がしたんだけどなぁ…」 そのルークの言葉を聞き、アッシュは驚いて視線を戻す。 見ると、ナタリアとルークの2人で、アッシュのキノコの先端を突ついていた。 毒キノコかもしれないというのに、世間知らずな王族2人の行動は、いつにも増して大胆だ。 「おいっ、お前ら、何をしている!?」 「何って、また汁が出ないかと思って…」 ルークが言いながら、キノコの先端部分を覗き込む。 全く警戒していないルークを見て、アッシュは青ざめた。 ルグニカ紅テングタケには、そんな特徴はなかった筈だ。 それは毒キノコで、汁というものは毒液かもしれない。 そう思うと、咄嗟に手が出ていた。 「おい、屑!そいつから手を離せ!!」 ルークからキノコを奪い返そうとした瞬間、 「へっ?」 強く握ってしまった為か、キノコの先端から、勢いよく、白濁色の液体が吹き出た。 「……~~~っっ、…アッシュ、ほんと、マジありえねぇから…!」 「っあ、いや、これは…」 顔にかけるつもりなどなかったアッシュは、無惨な姿になったルークを前に、僅かに身を引いた。 「いくら俺が憎いからって、ヒトとしてやって良い事と、悪い事くらいあるんじゃねぇーのか!?」 ルークにとって『アッシュからの謂われなき暴力』は甘んじて受けるべき事だが、『嫌いな食材の汁を顔にかけられる事』は、許容範囲外のようだ。 通常ならガイが「おい、ルーク。それはちょっと違うんじゃないか?」などと言って、ズレた価値観を優しく矯正してくれる場面だが……、 ……悲しいかな、ガイは今、黄泉の門開く所にある。 ガイにとって、今のルークの姿は、ジェイドの秘奥義インディグネイション並みに強烈だったのだ。 これで終わりです。ガイの人生が。 「…うー…、ほんっっと、信じらんねぇ…っっ!」 白濁食のドロリとした液体でベトベトになった顔を擦りながら、ルークはぽろぽろと涙を溢し始める。 目に入った液体が染みて、実はかなり痛いのだ。 「ありゃりゃ、アッシュがルークを泣かせちゃったー!」 何故かアニスの声は楽しそうだ。 「アッシュ、確かにこれは、あんまりでしてよ!早くルークに謝って下さいませ!」 ナタリアがアッシュにハンカチを渡す。 謝って、それで顔を拭いてやれ…とでも言いたいのだろう。 ルークは自分で拭いているようだが、不器用なのか、それとも、普段はガイに世話を焼かれているからなのか、余計に広げているようにしか見えない。 「く…っ、世話の焼けるレプリカだ…!!」 ルークの顔を拭いてやりながら、こういう時に真っ先に飛んでくるガイは一体何をしているのかと、アッシュは恨めしく思った。 ちなみに、この時、ガイは生死の境をさ迷っていた。 まだ終わってなどいない。色んなイミで。 ティアが治癒術をかける姿を眺めながら、青い軍服に身を包む軍人は、実に楽しそうに「ティア、ご苦労様です」と声をかけた。 「いやぁ、私が第七音譜術士でしたら、助力を惜しまない所ですが、いやはや残念です」 全く残念そうではない言い方で、ティアを労う。 労うつもりがあるなら、集中力を途切れさせないよう黙っててもらいたいものだが、そこはジェイド・カーティス大佐なので、仕方ない。分かっててやってるのだ。この死霊使いは。 そんな風に、ティアはさっさと諦めた。 「うわぁ、ガイってば、ヤバいんじゃないんですかぁ?」 アニスがジェイドの隣に並んで、幸せそうな顔で紅い海に横たわるガイを見る。 ジェイドは「おや、アニス」といつもの胡散臭い笑顔を向けた。 「ところで、ガイが何リットルほど失血したら死ねるか、アニスはご存じですか?成人男性は体重1キログラムあたり、およそ80ミリリットルの血液があるそうなので、ガイの総血液量は約6320ミリリットルだと推測されます。人間は3分の1の血液を失うと死ねるそうなので、つまり…」 などとジェイドは楽しそうに話を進める。 アニスはツインテールをぴょこぴょこ揺らして、可愛く小首を傾げて見せた。 「大佐ぁ、話がグロすぎて、ついていけませぇ~んッ☆あとぉ、『死ねる』じゃなくて、せめて『死ぬ』って言ってもらっても良いですかぁ?怖すぎですから~ッ☆」 アニスはやはり楽しそうだ。 出血がようやくおさまった事を確認したティアは「あとはユリア様のご加護を祈りましょう」とだけ言って、匙を投げた。治癒術では失った血液は取り戻せないのだ。 決して、鼻血の止血に嫌気が差した訳ではない。 「ティアさん、ティアさん~!」 ミュウがティアに駆け寄る。その愛くるしい姿に、可愛いものが大好きなティアは「可愛い…、癒される…」と呟きながら、ぎゅっと抱き締めた。治癒術を使って消費したTPまで回復しそうな勢いだ。 「ティアさん、大変ですの!」 ガイの出血より大変な事があるのだろうか?と考えながらティアは首を傾げたが、 「ご主人様、アッシュさんに、ガンシャされたですの!」 「っえ!?」 思わぬ言葉に驚いて、抱き締める腕に力が籠り、危うくメロンでミュウを圧殺しそうになった。 「が、がががが、が、ん、しゃ…って…?」 ルークたちがいるであろう方向に視線を向けると、一体何がどうなってそうなったのか、白濁色の液体まみれになったルークの顔を、アッシュが申し訳なさそうに拭いて清めてやっている。 「…くっ、(可愛い)ルークに何て事を…っ!!」 可愛いものが大好きなティアは、アッシュへの殺意を込めて、グランドクロスの譜歌を歌い始めた。 「おや、なかなか面白い事になっていますね」 ジェイドがにこやかにミュウに話しかける。 「みゅうぅぅ、ご主人様が可哀想で、面白くなんてないですの…」 「しかし、あれは、ルグニカ紅テングタケではありませんね。私の記憶が確かならば、ルグニカ紅大テングタケでもない筈。ですが…」 「多分、あれはチーグルが春に食べるキノコですの」 「ほう?春、ですか?何故、春に?」 「春はチーグルの恋の季節だからですの!」 「それは、それは…」 ジェイドはいつものように眼鏡を押し上げる仕草で、表情を隠す。 それでも、笑っている口許が隠しきれず、アニスはちょっぴりうすら寒い気がした。 「あのキノコは、春になったら、チーグルのオスが、メスにあげるキノコですの!ボクも大人になったら好きなコにあげるようにって、みんなから教えられたですの!」 「おやおや。では、あれは催い…こほん、失礼」 一応アニスの手前なのでジェイドは黙ったが、耳年増のアニスは分かっていたりする。 わざとじゃないだろうか。いや、絶対わざとだ。 もちろんアニスはそう思ったが、怖いので口には出さない。 「みゅうぅ…、ご主人様の事が心配ですの…」 「人間にチーグルと同じ効果があるかどうかは疑問ですが…。まぁ、仮に大丈夫ではなかったとしても、アッシュか、そこで生死をさ迷ってるガイのどちらかが、勝手に処理してくれるでしょう」 さらりと怖い事を言いおった! アニスはちょっとだけルークの事を憐れに想う。 いつの間にかグランドクロスからの秘奥義イノセント・シャインが炸裂。 それを横目で確認したアニスは、 「でも、大佐ぁ、アッシュもガイも使い物にならないかもぉ?」 と冗談半分に言ってみると、 「アッシュのHPは60000ですから、問題ないでしょう。が、万が一の時は、仕方ありません。私が美味しく頂きますよ」 ジェイドが更に怖い事をさらりと言った。 大佐に食べられちゃったら、骨一本残んないよ、ルーク!! 逃げる時は、アニスちゃんがトクナガで加勢したげるからね! アニスは心の中で、大佐との戦いを覚悟する。 そんな事など露ほども知らないルークは、勇ましく戦うティアを見つめながら、 「すっげ!!ティアが殺る気だ!!暗殺者モードだ!!あの殺気に満ちた目、ちょっとヴァン師匠に似てて、かっこいいんだよなぁー!!」 …などと暢気に言いながら、目を輝かせていた。 そんな彼らを、ちょっと離れた場所から見守る2人。 アルビオールの操縦士であるギンジ・ノエル兄妹だ。 「あ、あの、兄さん…」 「もう少ししたら終わるから大丈夫だよ、ノエル。こういう時は放置が一番なんだ」 最終決戦を控えているという時期に、こんな事をしていて良いのだろうかとノエルは考えたが、 にこにこと微笑む兄ギンジを見て、こういう息抜きも必要なのかもしれないと思い直した。 それから程なくして、 大きな戦いは終焉を迎え、世界には平和な時が訪れた。 未だ帰還しない2人の英雄が中心となり、死力を尽くして掴み取った平和だった。 2人の英雄の母親であるシュザンヌは、 息子の1人が残した、赤い装丁の日記帳に視線を落とす。 開かれたページには、母シュザンヌの為に危険なキノコロードに向かった日の事が書かれていた。 「……こんな事もありましたわね…、2人が私の為に薬の原料を……」 本当の親孝行者ならば、薬など要らないから、一刻も早く2人揃って無事に帰ってきて、元気な姿を見せてほしい。シュザンヌはそう願いながら、思わず瞳から零れそうになった雫をそっと拭う。 何度、涙を溢しただろう。 ルークの残した日記を読み進めていく毎に、涙が溢れ、シュザンヌの胸は酷く締め付けられた。 戦いが終わった直後は、悲しみのあまり、日記を手にする事すら出来なかったものだ。しかし、ルークとアッシュの成人の儀の日を前に、心を強く持ちたいと考え、今になって漸くシュザンヌは読み始めたのだ。 「…ふふ、それにしても、この日の日記は、とても楽しそう……」 と気を取り直して日記を読み進めれば、思わず口元が綻んで笑みが零れ… 「……っっ!!!????」 …そうになったのだが、ある数行が目に飛び込んできて、シュザンヌは絶句する。 『いきなり怒り出したアッシュに、ガンシャされた。ガンシャっていうのは、自分のキノコを強く握って、先端から出るミルク色のベトベトした液体を、相手の顔に向けて発射する事だって、後でミュウが教えてくれた。俺よりミュウの方が物知りだなんて、ちょっとがっかりだ。とにかく、ガンシャはもう二度と嫌だ。無理矢理、口の中に突っ込まれた時も苦くて嫌だったけど…』 「何をやってたの、あの子達はーーーー!!!!!」 2人の英雄が揃って帰還する数日前。 その日、そんなシュザンヌの絶叫がバチカル中に木霊したとか木霊さなかったとか。 ※※ END ※※ ※ PR